深刻化と同時に関心も集める環境問題。ビーチクリーンなどクリーン活動(ゴミ拾い)を行うNPOやボランティアも増えています。しかし、なかなか減らないゴミたち…。そんな中、「ゴミ拾い」と「ジョギング(ランニング)」を同時にしてしまおう!と活動している人たちがいます。今やランニング人口は1055万人超えといわれます。みんなが走りながら少しでもゴミを拾えば? このユニークな活動を推進するRe.nature(リ.ナチュレ)代表の川田慎吾さんにお話を伺いました。
川田 慎吾(かわた しんご)
福岡県出身。東京理科大学を卒業後、日本有数の機械メーカーにて、エンジニアとして働く。会社員をする中で、健康の大事さを痛感し、パーソナルトレーナーとして独立。「運動」と「食事の知識」と「自然と繋がること」が現代人に圧倒的に足りてないと感じ、関わる人の身体と心の豊かさの向上に努める。海や山、農地などの自然と触れるにつれ、綺麗な自然を目指し、環境保護活動にも力を入れる。趣味は、筋トレ/農業/ビーチクリーン/ラグビー。(株)Re.nature代表取締役。
この活動はこんな人におすすめ
・環境保護活動に興味がある
・身体を動かしながらゴミ拾いやビーチクリーンをやってみたい
新卒で入った会社で実感した「健康」をもたらすもの
会社員時代に「健康の大事さを痛感」と仰っていますが、具体的なエピソードはあるのでしょうか?
エンジニアとして入社したのですが、40代、50代の先輩や上司があまり良い年の取り方をしていなかったというか。毎日コンビニのご飯で、病院に通っている人も多く、年以上に老けて見える方が多かったのです。「こうはなりたくないな」と。私自身は、高校・大学とラグビーをしていて食事や健康には気を遣う生活を送っていましたので、より気になったというか。健康であれば生産性も上がるのにとの思いもあり、運動と食事で健康になることを手助けできるパーソナルトレーナーを目指すようになりました。まずは働きながら資格を取得し、その後に独立しました。
「自然と繋がること」も大切にしていらっしゃるようですね。
生まれ育ったところも田んぼや海が身近にあるところでしたし、ラグビー部でも自然豊かなところで合宿などしていたこともあって、働いてからも旅行などで自然に触れて癒されていました。適度な運動と、食事の知識も大切ですが、加えてリフレッシュできる自然は、幸せになるための重要な要素だなと思っています。
楽しんでいたら、気づかないうちに社会貢献
自然を守りたい意識から「ゴミ拾い」をはじめられたのですか?
ゴミ拾いを始めたのは友人に誘われたからで、特に環境問題に興味があったわけではありません。しかもブロギング(ジョギング×ゴミ拾い)ではなく普通のゴミ拾いでした。
「プロギング」を始められたきっかけはなんだったのでしょう?
自分自身、環境問題をはじめとする社会問題に興味があったわけではなかったけれど、数年の間ゴミ拾いをしてみて、主催する側に回ってみたいと思い始めました。そして、自分が得意とする運動=体を動かすことと組み合わせてみたらと思ったのです。以前の私のように社会問題には興味はないけど、体を動かすことは好きだという人は多いですし。社会問題に貢献しているつもりはなくても、楽しんでいたらいつしか貢献していた。そんな入りやすさに一役買えるのではないかと。
ジョギングしながらゴミ拾いをするブロギングは、スウェーデン発祥で、日本に入ってきたのは最近です。2020年に協会の資格を取得しましたが、私が日本では二人目でした。
確かに、誰かと走りながらゴミ拾いって楽しそうですよね。環境問題を置いておいても。
実際に、20代〜30代の方が、在宅ワークの運動不足解消にと参加してくれる方が多くいらっしゃいます。もちろん他の年代の方や、普段からゴミ拾いを積極的にされている方もいらっしゃって、各々にとって新たな交流が生まれていますね。
プロギングの他にも「リナfit」というオリジナルのプログラムもあるそうですが、どういったものなのですか?
リナチュレのフィットネスで「リナfit」なんですが、「自然に触れながら体を動かす」がコンセプトになっています。現在定期的に活動しているのは、農作業しながらのフィットネス。スコップで土を耕しつつストレッチしたりします。農地って大地のエネルギーや、農作物の生命力を感じられて、行くだけで元気をもらえる場所。他にも、山や海での筋トレなんかも準備中です。
迫る食糧危機。まずは知ることから
農地での活動はフィットネス以外に「食の問題」にも焦点を当てているそうですね。パーソナルトレーナーの軸として「食事の知識」を挙げられていますが、そこからきたものですか?
農作物がどこから来て、誰が作っているのか?を見てもらい、生産者の思いや苦労を知ってもらいたいというのがあります。農地を貸してくださっている方もおっしゃっているのですが、食糧危機はやって来るので、そのときに備える意味でも、若者、子どもが危機感を持つきっかけになればと思います。
単純に、収穫してその場で食べる野菜の美味しさを知って、その後に選ぶものが変わればいいなというのもありますが。本当に甘くてめちゃくちゃ美味しくて。自分が関わったことで美味しさもひとしおですしね。
食育という意味でも価値のある活動ですね。
そうですね。それ以外にも、環境問題の解決にも繋がります。実は、パーソナルトレーナーとしては2019年に180°方向転換をしているのですが、大きな転機はNetflixで配信された「カウスピラシー」というドキュメンタリーを観たことです。このドキュメンタリーは畜産がいかに環境破壊に繋がっているかという内容でした。家畜を育てる工程は、他のどんなことよりも温室効果ガスを排出したり、水を使ったりします。妻に勧められて観たのですが、衝撃的でしたね。それまでも、お肉には発がん性があるのに食べていいのかな?と疑問に思っていたものの、筋肉に必要なタンパク源として、トレーニング指導の一環である食事項目に入れていました。しかし、このドキュメンタリーを観てからは、プラントベースの食事を勧めるようにしています。
プロギングイベントの際にも、ゴミ拾いが終わった後に皆でプラントベースのお弁当を食べるなど、畜産の現実と、ヴィーガン料理の美味しさなどを知ってもらう工夫をしています。
最近ではソイミートなども、手に入りやすくなりましたよね。
そうですね。本当にお肉を使っていなくても、美味しい料理はありますし、今ではラーメンや、和食、中華、カレーといったヴィーガン料理もありますよ。完全にヴィーガンにならずとも、週に数日お肉を食べない日を作るだけでも、変化はあると思います。
目に見える範囲のコミュニティ活動が未来を作る
楽しみながらゴミ拾いとか、意識してお肉を食べないとか、すぐに始められそうですね。多くの人がそういう行動を起こした先にはどんな世界が広がっているのでしょうか?
これまでは自分のため、国のためばかり、大量生産、大量廃棄が繰り返されてきました。しかし、これからは地産地消、循環経済で目に見える範囲の小さいコミュニティでものごとを回していく必要があると思っています。これからは他人や自然のために動く。「貢献」という言葉がますます重みを増していく世界になると思いますね。
Re.natureとしては、時事に沿って社会問題への取り組みのハードルを下げ、解決する方法を多岐にわたって探し、活動していきたいです。社会問題に対する活動には、たくさんの出会い、たくさんの感動があります。今現在は、社会問題に興味がないとしても、一歩踏み出してその感動を分かち合ってほしいです!
「ブロギング」や「リナFit」についての開催情報は、川田さんのInstagramをチェック!
取材・文/大倉 奈津子