近年のペットブームにより、犬や猫を家族として迎え入れる家庭が増えています。しかしながら、病気や家庭環境の変化による遺棄、外にいる猫への虐待、生態販売の影で犠牲になっている子たちなど、犬猫を取り巻く問題は少なくありません。今回は老犬や障害のある犬たちを中心に引き取り、一人で30匹の犬猫のお世話をしている「ワン!ダーランド」の今泉みどりさんにインタビューしました。
今泉 みどり(いまいずみ みどり)
神奈川県出身。4人の子どもを持つシングルマザー。 2006年、子育てのために沖縄移住。現在子ども達は巣立ち、大自然の中で30匹の動物達と共に暮らしている。
この活動はこんな人におすすめ
・動物愛護に興味がある
・障害のある犬・老犬をサポートしたい
・一人で頑張っている人を応援したい
引き取りの可能性が少ない子たちの受け皿になり、生涯面倒をみてあげたい
この活動を始めたきっかけを教えてください。
子ども達の「犬を飼いたい」という夢を叶えるため、1匹のトイプードルを迎え入れたことがきっかけです。そこから自然と動物に関する情報が入ってくるようになり、沖縄県の殺処分の現状を知りました。この子達を救うため、私が出来ることをやっていきたいという思いで動物愛護団体のスタッフになりました。そこでは犬舎シェルターを担当していたのですが、「シェルターでも救いきれない子達をさらに救いたい」という思いが強くなり、独立しました。
犬たちはどこから来るのですか?
ワン!ダーランドにいる犬たちは沖縄県動物愛護管理センターから、猫たちは道端でレスキューしました。現在、ワン!ダーランドには下半身付随の犬が2匹いるのですが、そのうち1匹はカテーテルを尿道に入れて毎回排尿をさせます。このようにお世話に時間がかかったり、自身の生活に制約が出るなどのリスクを抱えた子たちはセンターからレスキューされる可能性が非常に低くなります。このようなハンディを持った子たちの面倒を生涯見るというのが、私のレスキュースタイルです。
なぜ、ワン!ダーランドを始めようと思ったのですか?
里親さんが決まりづらい老犬、病気や障がいのある子など、お世話のリスクが高い子たちが生涯安心して暮らせる場所を作りたいと思ったからです。基本的にお世話にかかる費用や医療費は自己負担ですが、Facebookの投稿を見て寄付をして下さる方もいらっしゃるんです。今はこれ以上のレスキューができないため積極的な寄付の呼び掛けはしていませんが、それにもかかわらず応援して下さる方には本当に感謝しています。そんな影のサポートに支えられながら、今のワン!ダーランドがあります。
シェルターが現在の場所に落ち着くまで、紆余曲折あったようですが。
動物が30匹ほどいる生活なので、付近からの苦情で何度も拠点を転々とせざるをえなくなり、そのたびに動物たちと大移動を繰り返して来ました。ここ数年でたくさんのことが重なり、運営にかかる費用は大きくマイナスです。
障がいや持病のある子たちが生涯を終えるまで、お世話し続けていきたい
具体的にどんな活動をされていますか。
現在、犬猫合わせて30匹ほどいますが、この子たちのお世話を自分の一生をかけてやり遂げたいと思っています。そしてこの子たちと共に老いていきたいと思っています。
仕事をするほどお世話をする時間がなくなり、仕事をしないと維持ができない
現在、活動をする上での課題・困っていることはありますか。
どうしても、この子たちを生活させるためには費用が必要になってきます。しかし、仕事をすればするほどお世話にかける時間がなくなってしまうし、仕事をしないと活動が維持できません。「もっとこの子たちとゆっくり一緒にいてあげたい」と常に心が痛んでいます…。しかし、だからこそ動物達と接するときは全神経を集中させ、短い時間のなかでも愛が届くように気持ちを込めてお世話をしています。
不安いっぱいだった子、ガリガリだった子。変わっていく姿を見ているときが一番幸せ
この活動をしていて良かったと思う瞬間を教えてください。
出会った当時は不安いっぱいだった子たちの表情が笑顔に変わっていくのを見たとき。路上でガリガリだった子たちが丸々と太り、のんびり昼寝をしているのを見たとき。心が純粋な動物たちと生活を共にしていると、自分の心も常に浄化されクリアになっていきます。「生きる」ということの本質を常に見せられているので、余計なことを考えず自分自身の人生にもまっすぐに向かえるようになりました。
動物達の犠牲のない社会を目指して、発信し続けていきたい
活動をする上での目標やゴール・今後の活動について教えてください。
動物達が置かれている厳しい状況を一人でも多くの人たちに知ってもらうために、様々な発信や活動のやり方があると思います。私は、SNSを通してこの子たちとの毎日を綴り、「動物たちにも私たちと同じ心があり、感情があること」を伝えていきたいと思っています。 不幸な境遇にいる動物たちに手を差し伸べてくれる人が増え、人にも動物にも優しい眼差しを向けられる愛に溢れた社会が当たり前になるよう言葉を発していきたいと思っています。